※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=池田安佑美、撮影=飯島隆)
優勝インタビューを受ける屋比久監督
2010・11年と2年連続でインターハイ・ベスト4の浦添工には安定した力があった。「昨年も初優勝を狙っていた」(屋比久保監督)が、未曾有の大震災で大会は中止。今大会は2年越しの想いを爆発させるべく臨んだ大会だった。
チーム構成は50㎏級から3階級が1年生(4月から2年生)、66㎏級から120㎏級が2年生(同3年生)。当然、ポイントゲッターとなるのは66㎏級の屋比久翔平、74㎏級の本村匠、84㎏級の与那覇竜太、120㎏級の宮国雄太の4人だ。
初戦(2回戦)の大和広陵(奈良)戦は7-0。3回戦の鹿屋中央(鹿児島)は6-1、準々決勝の田布施農工(山口)は6-1、準決勝では岐南工(岐阜)5-2、決勝の花咲徳栄(埼玉)戦は4-3というスコアだったが、66㎏級からの4人は全勝という安定感を見せた。
■苦手意識が強い花咲徳栄を決勝で撃破!
全国を制するために、避けて通れないのが春夏あわせて40回も優勝している霞ヶ浦(茨城)と、その霞ヶ浦に数度勝ったことがある花咲徳栄(埼玉)の2校だ。霞ヶ浦は花咲徳栄に敗れて今大会は上位進出ならなかったが、屋比久監督は「花咲徳栄さんとは、どうも相性が悪い」と警戒心を強めていた。
試合が始まって、その予感は的中。50㎏級はわずか54秒でフォール負け。55㎏級はストレートで、60㎏級も2ピリオドともにテクニカルフォールによるストレート負け。決勝戦開始からわずか10分足らずで3敗し、絶体絶命となった。
“大将戦”で勝ってチームの勝利を決め、マット上で顔を覆った宮国
花咲徳栄の120kg級は、昨年のJOCジュニアオリンピックカップのカデット・フリースタイル100㎏級優勝で、今年2月の関東高校選抜大会で2連覇の山本晋也が対峙した。実績のある山本だが、宮国は落ち着いていた。「勝負が自分のところに来る心構えはできていた」と、丁度いい緊張感を持ってマットに上がった。
遠間からのタックルを武器とする山本に対し、宮国は密着して山本の得意技を封印。第1ピリオドはクリンチで取られたが、第2ピリオド1分過ぎ、山本がラッシュして前に出たところをうまく返して3点。第3ピリオドはクリンチの優先権を生かして浦添工4勝目を手に入れた。
■地元インターハイが終わっても、消えなかった強さへの思い
「インターハイのためにちびっ子を育てて、合宿でもディズニーランドでも、いつでも一緒だった。『島がぁ』(島の子供=地元の子)のみで全国制覇ができて本当にうれしいです。8月のインターハイでも優勝したいです」(屋比久監督)。
インタビュー中に涙ぐんだ84kg級の与那覇
2010年のインターハイでは、その成果が実って学校対抗戦3位、個人戦でも準優勝者が出た。沖縄インターハイに向けた指定強化は終了したが、沖縄の熱は冷めることがなく、地元インターハイの2年後に悲願の全国制覇―。史上初の沖縄県勢による優勝で、また全国高校選抜の新たなる時代が始まった。