※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=保高幸子)
日本が誇る軽量級-。2010年のグレコローマン60kg級世界選手権2位の松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)は、昨年の世界選手権で五輪出場枠を取ることが期待されていた一人だった。しかし実力を発揮できず、1回戦敗退。五輪への切符は持ち越しとなった。
30日から始まる五輪予選第2ステージ「アジア予選」(カザフスタン)での枠取りに挑む松本は「ここで枠を取れないようじゃ、五輪では勝てない」と気合を入れる。
■世界選手権の失敗を糧に、スタンド技を強化
今冬の欧州遠征では、ゴールデンGP予選大会の「ベービ・エムレ国際大会」(トルコ)で2009年世界選手権で負けたカザフスタン選手に勝利。当時は力の差があったというが、第2、3ピリオドをスタンドでのポイントで取り、逆転勝利。自分の成長を確認できたという。
その後のハンガリーでの合宿では、世界の名だたる強豪と技術を争い、収穫は十分。「レベルの高い所でやって、どのあたりまで行けるか、という目的あった。自分のスタイルの確認ができました」と手応え十分の遠征をこなした。
全日本合宿で練習する松本
■ビデオ研究よりも、自分のやってきたことを出す
日本代表選手にはiPadが支給されるなどビデオによる対戦相手の研究が浸透し、それを役立てている選手は少なくない。しかし松本は「じっくりと見るのは、自分には向いていないと思います。世界選手権の時も、ビデオは見ましたが、どんな技が得意か確認する程度でした。自分との試合がそのビデオ通りになるわけではありませんから、自分が信じてやってきたことを出すことが大事だと思います」と話す。
ビデオ研究によって考えすぎる傾向があるのだろう。先入観を持ちすぎないことが自分にとって一番いい方法だと考えている。今までやってきた練習を信じることが最高の作戦だ。
「国内でも世界でも、誰よりも練習しているという自信がある。今まで天才と言われたことはないですから」と、自分を努力タイプであると評価しているからこそ、持論を展開できる。
■アジアの3強が抜けているが「弱い相手何なんていませんよ」
敵の一人と思われるディルショド・アリポフ
インドは何人か候補がいるが、2010年アジア大会3位のラビンダー・シンがくると予想される。どの選手も傾向はわかっている。松本は世界選手権2位、アジア大会で3位と実力をあげており、松本の方が格上と考えていい。
「弱い相手なんていませんよ」と、天才肌ではない松本はこぼすが、「優勝して枠を取り、はやく五輪に備えたい。目標は五輪で勝つことですから」と、世界2位らしく五輪を見据えた言葉が続く。この予選で実力を発揮し、大きくステップしてほしい。
そのための練習は誰よりもやってきた。きっと出場枠を獲得して笑顔で帰国してくれるだろう。