※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
米国・コロラドスプリングズへ遠征していた学生選抜チームが2月7日、成田空港着の全日空機で帰国した。
「デーブ・シュルツ記念国際大会」は、フリースタイルで銅メダル2個(55kg級・半田守=専大、84kg級・山口剛=早大)、グレコローマンはメダルがなく4位が2人いう成績に、滝山将剛団長(全日本学生連盟会長=国士舘大部長)は「2kgオーバー計量の大会であり、外国選手のパワーに戸惑っていた部分はあった。外国選手は形にはまらない選手も多く、これに面食らった選手もいた」と振り返った。
左から滝山団長、山口、半田。
一方で、「こうしたことは経験してこそ分かる。今後に役立つと思う。レフェリングのおかしさと闘うのも経験」と総括。いま五輪の舞台を目指している選手のほとんどはこの大会を経験している選手。「経験を生かしてほしい」と、各選手の今後に期待した。
グレコローマンは採用されたばかりの新ルールで実施され、相手と四つ組みの状態から試合がスタートされたという。しかし「すぐにお互いが離れてしまう。四つに組んでいたことでポイントを先制したというケースは見なかった。何のためのルール改正なのか分からない」という。(You Tube 動画=55kg級:中野智章3位決定戦)
この大会は、1996年にコーチに射殺されるという不慮の死を遂げた1984年ロサンゼルス五輪金メダリスト、デーブ・シュルツ氏をしのんで開催される大会。シュルツ氏にお世話になった人や憧れていた選手など、幅広い分野から役員や選手が参加し、全員で盛り上げようというムードがあるという。
「勝った負けたがすべてではない。スポーツは文化」ということを感じさせてくれる大会で、そうした雰囲気に接することができる貴重な経験だったと振り返る。須藤元気監督(拓大監督)は英語を駆使し、社交性に富むなど「人間としての幅があることを選手は感じてくれたと思う。強ければそれでいい、じゃない。学生として、社会人として、知性と教養をもった人間に育ってほしい」と遠征を総括した。
■専大主将として勢いをつけた半田、山口は4月から海外武者修行
銅メダルを取った55kg級の半田は「銅メダルで喜んではダメだと思いますが、国際大会で初めてのメダルなので、やっぱりうれしい」と第一声。失点が少なかったことを勝因に挙げ、負けた試合は「ポイントを取れなかったことと、クリンチの攻撃がへたくそだったから」と反省した。
3位決定戦で闘う半田守
84kg級の山口は「ラッキーでした。対戦相手もそんなに強くなく、運もよかった」と、まずは謙そんのコメント。「いつもは『攻めなければ』と思っているうちに試合が終わっていた。今回は組み手がうまくできて、今までの遠征の成果がやっとできたのかな、と思っています」と言う。
ロンドン五輪の代表を本気に狙っていた。その夢が破れ、「まだ落ち込んでいる部分はあるのですが、国際大会で好成績を残せたことを今後の糧にしたい」と話す。卒業後は就職せず、岐阜県協会と親などのサポートを受けて世界各地へレスリング修業に行く予定。「アメリカもよかったけど、ヨーロッパのレスリングを学びたい」と話し、強国に長期滞在して世界で通じる選手を目指す。
チームで唯一の全日本王者のフリースタイル74kg級の高谷惣亮(拓大)は、3位決定戦で敗れてメダルに手が届かなかった。しかし「アメリカ伝統の階級ということで、現役世界チャンピオンも2010年の世界選手権代表もいた階級でした。その中で、しかも高地という厳しい環境の中で闘うことができ、いい経験でした」と振り返る。
世界王者のバローズは反対側のブロックで、闘う機会はなく「残念だった」と言う。バローズとは北村公平(早大)が闘い、0-1,0-3の判定負け。その試合を見て、「そんなに強いとは思わない。技術で負けるとは思わない。勝負できる」という感触を得たが、「筋肉はすごかったですね。あれを見習って、あと2kgは筋肉をつけたい」と言う。
全日本チャンピオンになってから初めての国際大会。やはり気持ちの持ちようは違ったそうで、「チャンピオンとして負けられない」という前向きな気持ちを五輪アジア予選(3月30日~4月1日、カザフスタン)でも発揮したいところ。「あと2ヶ月ではなく、まだ2ヶ月という気持ち。2ヶ月あれば実力は伸ばせる。絶対に優勝します」と気合を入れた。