※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
2月16~19日に韓国・亀尾で行われる2012年アジア選手権は、五輪予選ではないため他国がどのような位置づけをしているか分からない大会だ。4年後を見据えてオール若手で参加する国もあるだろうし、五輪出場枠を取った強豪が五輪へ向けての実戦練習として出場してくるかもしれない。日本男子はほとんどの階級で五輪代表争いがからむ大会となり、結果が求められる重要な大会となる。
フリースタイル74kg級の小島豪臣(K-POWERS=右写真)も、その一人。2006年アジア大会(カタール)で銀メダルという成績はあるものの、74kg級での国際大会はこれが初めて。不安は少なくないだろうが、階級アップの壁に挑み、つなげたロンドン五輪への道を途中で終わらせたくはあるまい。
■アジア選手権で勝って、チャンスを待つ
全日本王者の高谷惣亮(拓大)が3月末のアジア予選(カザフスタン)で出場枠を取ってしまえば、小島の挑戦はそこで終わってしまう。しかし「アジア選手権で勝たなければ、オリンピックに行けません。勝つことしか考えていません」との決意で汗を流す毎日。高谷が五輪出場枠を取れなかった時にチャンスをもらうためには、アジア選手権で結果を出さなければならない。
84kg級全日本王者の松本篤史と練習する小島
66kg級では米満達弘(自衛隊)の最大のライバルだった。米満が昨年の世界選手権で銅メダルを取って五輪出場枠を取ったことで、1階級上で五輪の道を目指すことにした。 2010年の全日本社会人選手権は74kg級に出場し、前年の国体王者を破って優勝するなど国内の74kg級である程度の結果を出しており、この選択は間違いではないだろう。
■4分間の内容は互角だった全日本選手権決勝
ふた開けてみると、12月の全日本選手権は「減量がなく、脚がよく動いた」。2回戦で同年の世界選手権代表の高橋龍太(自衛隊)を2-0で撃破するなど、66kg級の世界メダリスト相手に鍛えた実力は74kg級ででも十分に通じた。これで気分をよくし、続く2試合も勝って決勝へ。
「練習でもやったことがない」という3年連続学生二冠王&国体王者・高谷との闘いは、第1、2ピリオドとも2分間を0-0。第1ピリオドのクリンチの防御でテークダウンを取られ、第2ピリオドの攻撃では守られてしまうという内容で、ピリオドスコア0-2で敗れた。
全日本選手権決勝で高谷と闘う小島
■66kg級世界銀メダリストとの闘いでつちかわれた“74kg級の小島”
しかし、わずかな可能性がつながったのだから、それに向けて気持ちを高めていかなければならない。まずパワー対策。74kg級の強豪外国選手のパワーが、66kg級から上げたばかりの選手より上回っていることは間違いない。「できたら1大会こなしたかった」とのことだが、その時間もなく臨まねばならない。練習では、相手が同じ階級か84kg級の選手とやることを多くし、パワーのある相手に慣れる練習に力を入れる。
一方で、「短期間に外国選手と互角にできるパワーはつかない。66kg級でのスピードでも勝負したい」と、パワーで真っ向対抗するつもりはない。結果論だが、もう1年でも早く階級アップしていれば、違った形になったかもしれない。しかし、「そうした後悔はまったくありません」-。
米満との闘いを経てこそ培われた“74kg級の小島”。その実力を発揮する時がやってくるか。まず、目の前のアジア選手権に全力投球だ。