2012.02.07

【関東高校選抜大会・特集】“台風の目”埼玉栄を率いた澤田翔人主将

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

優勝した澤田翔人と野口篤史監督

 今年の埼玉栄は一味違う! 関東高校選抜大会の個人戦66㎏級は埼玉栄の主将、澤田翔人が優勝。大会連覇を達成した。

 今年の大会、学校対抗戦、個人戦ともに台風の目となったのが埼玉栄だ。学校対抗戦では6階級でのエントリーながら決勝戦まで進出し、霞ヶ浦(茨城)から3勝を奪い、120㎏級の不戦敗が惜しまれる結果だった。

 その悔しさを爆発させたのか、翌日の個人戦では4階級で決勝に進出。決勝進出者の数では霞ヶ浦や花咲徳栄(埼玉)を抜いてトップだった。50㎏級の藤川聖士、74㎏級の武田光司、84㎏級の石原広夢は惜しくも準優勝に終わったが、澤田は主将の意地で優勝を果たした。

■目指す先輩の背中&後輩には負けたくない

 澤田主将は「みんな(他の3選手が)負けてしまったし、決勝の相手が1年生だったので負けられなかった。団体も優勝まであと一歩だったので、その悔しさを晴らしたかった」と2連覇の原動力を述べた。

 昨年もこの大会を制し、全国制覇を視野に入れたが、3月の全国高校選抜大会が東日本大震災の影響で中止となり、全国デビューが8月のインターハイとなってしまった。中学時代は目立ったタイトルがなく、全国の舞台の経験値が高くなかった澤田主将は「緊張してしまった」と、関東選抜王者のプライドを十分に見せることなくベスト8に終わった。

 しかも負けた相手は1年生の水野真斗(京都・網野)。「年下にはもう負けたくない」と思った経験が今大会に生きた。

 澤田を刺激してくれる存在は身近にいる。同じ埼玉栄の1つ年下の武田光司だ。74㎏級のレギュラー選手として今大会は団体で大車輪の活躍を見せ、個人戦でも決勝戦に進出した。武田は全国中学生チャンピオンとして鳴り物入りで入学した選手。ここでも、「負けたくない!」と、澤田主将の闘志に火が着いた。

 強くなるために前向きな澤田主将は、「埼玉栄に入ったおかげです」と振り返る。以前は、試合の前半で歯が立たないと「絶対に勝てない」と勝負を諦めてしまう選手だった。それが、良きライバルたちと練習を共にすることで、今では「自分が負けるはずがない」と強気になれたという。

 技術面も「すごく雑なレスリングだったのが、一つ一つきっちりこなせるようになってきた」と上達を感じているようで、「もっと前さばきを上手くしてタックルからのローリングを決められるようにしたい」と向上心を見せた。

■2年前の高校三冠王者、保坂健が目標

 杉田強喜(群馬・太田商)、との決勝では受けに回る場面が多々見られたが、「あれは作戦。ガンガン攻めてくると分かったので」と臨機応変に対応した結果だった。だが、「受けに頼りたくない」と一言付け加えた。

 埼玉栄には、2年前に同じ66㎏級で保坂健(現早大)がこの大会で優勝し、全国高校選抜大会、インターハイ、国体と三冠王を達成した。澤田主将は「保坂先輩は、自分の憧れの選手。僕も三冠王を達成して保坂先輩の記録に追いつきたいです」と目標を掲げた。

 もう一つ、埼玉栄には県内に全国トップレベルの花咲徳栄がいる。2008年は埼玉インターハイのため両校そろって出場できたが、それ以降は団体でインターハイの道は断たれたまま。08年の県予選では花咲徳栄に敗れての2位出場だった。今大会の結果は花咲徳栄(3位)を上回る準優勝の座を得た。澤田主将は「今年は団体と個人でインターハイに行きたいです。まずは3月の全国高校選抜は6階級で頑張ります」と宣言。今年の埼玉栄は全国選抜でも台風の目になるのか-。