※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
韮崎工流で米満先輩に続く-。関東高校選抜大会の個人戦、フリースタイル55㎏級はロンドン五輪男子フリースタイル66㎏級代表・米満達弘の高校の後輩にあたる文田健一郎(山梨・韮崎工1年)が優勝した。
昨年の山口国体までは、50㎏級の両スタイルで好成績をおさめていた山梨のスーパールーキー。今年は階級を上げた。「今回は50㎏級から55㎏級にアップして初めての大会だったので、緊張や不安がありましたが、それを克服できました」と本人も満足の結果だった。
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55kg急優勝の文田と父・文田監督
文田の父である文田敏郎監督の方針で、韮崎工の生徒は、米満もそうだったように両スタイルにふれることを基本としている。中学の後半に始めたグレコローマンに、文田はすぐさま虜(とりこ)になった。「フリースタイルにはない3点、5点と取れるダイナミックな技が好きなんです」と、韮崎工に入って最初のJOC杯はカデットのグレコローマン50㎏級で優勝した。
その後、8月のインターハイへ向けてフリースタイルに力を入れ、キッズ時代から磨いた感性を武器に3位に入賞。両スタイルで実績を挙げている。「でも、フリースタイルは苦手。足を触らせてしまって監督に怒られる」と、グレコローマン専門で練習を積みたいのが本音のようだ。
しかし日本の高校はフリースタイルが主流で、3月に控える全国高校選抜大会はフリースタイル。「今まではフリーとグレコを半分の割合で練習してましたが、3月に向けてはフリー7、グレコ3の割合ですね」と苦笑いを浮かべた。
■韮崎工の練習量は、日本一!
文田がレスリングを始めたのは、父親が指導する場についていったのがきっかけと、二世選手によくあるパターン。小学校時代は「マット遊びがほとんどで、厳しい練習はしなかった」と、楽しくレスリングに触れていた。
中学に進学するのをきっかけに、父親から「ちゃんとレスリングをやりたいのか」と問われ、単純に「はい」と答えた。そこから、今までの練習メニューが一変。長く、厳しい内容になり、中学2年からは高校生とともに練習をするようになった。「本当にキツくて、辛くて・・・」。その練習が報われ、3年でJOC杯ジュニアオリンピックの男子グレコローマン・カデット46㎏級で優勝し、全国中学生選手権では「努力が報われた」と悲願の優勝を果たした。
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だが、韮崎工高に入学すると、すぐさま練習方針に疑心暗鬼になった。「うちの練習はすごく長いんです。平日は4時間、休日は6時間くらいやってて、他校と全然違うんです」。全国優勝常連の霞ヶ浦高でも、練習は2、3時間が限度だそうで、それに比べると量は日本一かもしれない。
韮崎工の練習方針を不安がっていたころ、OBである米満達弘が世界選手権で銀メダルを獲得し、12月には正式にロンドン五輪の日本代表に決まった。「韮崎工の練習は間違っていないということが分かりました」と文田は、迷い無く練習に打ち込んでいる。
米満は韮崎工出身の初の五輪選手となり、同校に歴史を刻んだ。文田も負けてはいられない。「韮崎工からは、まだ全国高校選抜チャンピオンは出ていないので、僕が初めてのチャンピオンになります」とキッパリ。
タイトルを総なめにしたインターハイ3連覇の高橋侑希(三重・いなべ総合)が抜ける55㎏級。文田がニューフェースを目指す。