※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
メダルを取った選手たち。前列左から入江、川井、後列左から伊調、土性、村田。
ロシア最高レベルの国際大会と言われるこの大会。2010年は「金2・銅1」、昨年も「金2」という成績だったが、今年はそれを上回る「金4・銀1」の成績。63kg級の伊調馨(ALSOK)は当然としても、高校生3選手(51kg級・川井梨紗子、55kg級=村田夏南子、67kg級=土性沙羅)が優勝し、1人が銀メダル(48kg級・入江ゆき)という内容に木名瀬重夫監督(日本協会専任コーチ)は満足そう。
「どの国も1番手、2番手が出てきていて、決してレベルは低くない中で高校生3人が結果を出してくれ、今後に向けていい兆しが出ている。決勝で敗れた入江は、メルニク(イリナ=ウクライナ、2004年アテネ五輪金)の先制攻撃でちょっとひるんだみたいだ。まだ経験が浅いから仕方ないが、気持ちを持ち直してよくがんばってくれた」と総括。
五輪代表選手として唯一参加した伊調は完ぺきの内容だったそうで、「ロシアの一番手を破った選手が決勝に出てきた。それでも完封だった。スコアこそ2-0だったが、前さばきで相手の攻撃をすべてカット。相手は嫌になっていることが分かった」と言う。
五輪3連覇へ向けて最高の試合内容だったそうだが、「外国選手は一発を狙ってくるし、準決勝でもそうした場面があったが、バッティングもしてくる。そうしたことへの注意が必要」と注文した。
伊調は「いろんな練習の成果を試してみたかった。両脚タックルだけになってしまった面もあるけど、フェイントからのタックルの入り方がよくなったかもしれない。ハイクラッチのタックルを1年かけてやってきたけど、まだまだかな、という感じ。試合でできてこそ、初めて自分の技になったと言える」と、やや控えめなコメント。
ただ、弱いと思える選手はおらず、「いい練習になったと思う」と振り返った。昨年の世界選手権では初戦で相手の“頭突き”で鼻を強打し、その後はやや腰が引けてしまったようだが、「その怖さはなくなった」と、収穫は大きい遠征となったようだ。
目指すものは、あくまでもパーフェクトなレスリング。それを実現するためにはロンドン五輪までの期間では足りないと思っている。「ロンドン・オリンピックで100という気持ちは持っていない。100になるのは、その先。オリンピックではその時に持っている最高のものを出したい」と話し、“究極”を目指した闘いの途上でオリンピックを迎える腹積もりだ。
女子チームはこのあと、2月5~9日に東京で今年最初の合宿をスタートする。
51kg級優勝・川井梨紗子(愛知・至学館高)「シニアの大会でどこまでできるか、という気持ちで臨みました。優勝したとはいえ、どの試合も息が上がってしまって接戦でした。カデットと違い、どの選手も力がすごかった。その中ででも、攻めることができたのが勝因だと思います。こうしたことを経験できたのはよかったと思います。今年は全日本選抜選手権で勝って、世界選手権(9月、カナダ)を目指します」
55kg級優勝・村田夏南子(JOCアカデミー/東京・安部学院高)「決勝は第1ピリオド、クリンチになり、自分のボールが出てくれて勝った。(2分の間で)ポイントを取って勝たないとならない。(去年も優勝しているが)去年の方が攻めることができたような気がします。優勝は自信になりますが、シニアの世界で勝ち抜くには、まだまだやらなければならないことがあります。これからも、国内で勝って国際大会に行けるように頑張りたい」
67kg級優勝・土性沙羅(愛知・至学館高)「1回戦から準決勝までは、攻めきることができて、いい内容だったと思います。決勝も自分のレスリングができました。世界の67kg級の中では、身長が低い方なのですが、タックルで攻めていくことで勝てると思います。今年は世界選手権(9月、カナダ)優勝が目標。数多くのスパーリングをこなせるだけの体力をつけ、だれが相手でもタックルを決められるようにしたい」
48kg級2位・入江ゆき(九州共立大)「(決勝はアテネ五輪チャンピオンが相手)何ができるか試してみようと思いましたが、差がありすぎて、その前に終わってしまいました。もっと強くならないとなりません。力も技もすべて違いました。名前負けはしませんでした。自分のいいところと悪いところをしっかりと見つめ、実力をつけていきたい」