2012.01.19

東京五輪の5人の金メダリストが男子全日本チームを激励

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)

5人の金メダリストと現役選手・コーチたち

東京・味の素トレーニングセンターで合宿中の男子両スタイルの全日本チームは1月18日、報道陣に練習を公開。1964年東京五輪金メダリスト、フリースタイル・フライ級(52㎏級)の吉田勝義さん(日大卒)、バンタム級(57㎏級)の小幡洋次郎さん(旧姓上武=米オクラホマ州立大卒)、フェザー級(63㎏級)の渡辺長武さん(中大卒)、グレコローマン・フライ級(52㎏級)の花原勉さん(日体大卒)、バンタム級(57㎏級)の市口政光さん(関大卒)が選手の激励に訪れた。
 
 5人は、本協会が今年創立80周年を迎えるにあたって制作中の80年史の企画(座談会)で同所を訪れ、練習開始前に全日本王者を中心とした現役選手にエールを送った。
 
 吉田さんは「私は3つの『C』を大切にしている。concentraiton(集中)=練習の時から集中が大切です。control(正確さ)=計画などなにごとにも正確に。さらに、技も正確にポイントを取る気持ちで。confidence(自信)=自分がこれだけやったという自信を持ってやることが大切」と、自身が信条としてきたことを話した。
 

あいさつする五輪V2の小幡洋次郎さん

日体大の夏の恒例である草津合宿などで今でも現場に顔を出す小幡さんは、選手の名前を挙げて、「湯元兄弟はバランスがあって強いね~。米満は金メダルを取れる、74㎏級の高谷は・・・もうちょっとかな」と、選手たちを評した。
 
■だれもがロンドン五輪での金メダル獲得を熱望
 
 “アニマル渡辺”という異名を持つ渡辺さんは「負けることは『死』だと思え」と宮本武蔵を例に精神論を話した。「負けたくなかったら(死にたくなかったら)、世界一の練習をすることです。一つのチャンスを命がけでやりましょう」とハッパをかけた。
 
 レスリングで勝つ上に一つのポイントとなる減量-。花原さんは、減量苦が一番の敵だったエピソードを披露。レスリングの技術、体力は申し分なく、「減量に成功すれば勝てる」というほど、日々の食事が訓練だったことを話した。
 
 市口さんは、関大在学中の1960年にローマ五輪に出場した選手。「初めてオリンピック代表になったときは、それだけでうれしかった。でも、7位と結果を残せなかった。新聞社への就職が決まっていたが、それをやめて東京五輪を目指して優勝した」と、五輪への熱いエピソードを打ち明けた。
 

左から花原さん、小幡さん、米満、渡辺さん、市口さん、吉田さん

5人のメッセージに、ロンドン五輪フリースタイル66㎏級代表の米満達弘(自衛隊)が「オーラがあった」と話すように、チーム全員の目が輝きを増した。集合写真を撮った後、東京五輪金メダリスト全員が、男子で唯一五輪代表に決まっている米満と記念撮影。「米満、頑張れ!」と5人全員が金メダルの気合を注入した。
 
 小幡さんは、「米満君のことはよく覚えている。大学1年の時に、(北志賀合宿で)変わったレスリングをするなと思っていたら、そのまま強くなった選手。金メダルを期待したい」と大きな期待を寄せた。
 
 金メダリストたちは、レスリング道場にしかれている6面マットを見て、「こんなマットがあるなんて…」と味の素トレーニングセンターの施設に感嘆した様子。渡辺さんは「これだけの施設で練習ができるんだから、金メダル取らないとね」と、ロンドン五輪で24年ぶりの男子金メダルを切望していた。