※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
優勝を決め、応援席にガッツポーズの天野
優勝後はコーチとして指導する中大選手らとハイタッチで喜びを分かち合い「今年は初めてのことばかりで戸惑いもあったけど、多くの方々に支えられて優勝できました。みんなさんにありがとうと言いたいです」とまずは感謝の言葉を口にした。
■4月の痛恨の黒星で、さらに強くなった
天野にとって2011年は飛躍の1年だったと言えるだろう。4月の全日本選抜選手権で実力者の岡太一(自衛隊)、昨年のアジア選手権銀メダリストの斎川哲克(両毛ヤクルト販売)を撃破して初優勝を飾り、秋の国体でも3連覇を達成。締めくくりとなる今大会でもきっちり優勝してみせた。
しかし、完ぺんきに見える今年の成績の中に、どうしても悔やまれる敗北がひとつだけある。全日本選抜選手権の直後に行われた世界選手権出場をかけた岡とのプレーオフだ。「あのプレーオフでは中途半端なレスリングで負けた。だから今大会は失敗してもいいから最後まで攻めよう。そんな気持ちで試合に挑みました」-。
手痛い敗北を機に開き直った天野は強かった。初戦から得意としているリフト技をさく裂させ、決勝でもライバルの岡からビッグポイントを奪って優勝を決めた。「今日はグラウンドでよく持ち上げられた。みんなの声援もあったし、決勝では100ではなく、120の力が出たと思います」と振り返る。
岡太一に、4月の痛恨の黒星のリベンジを果たした天野
これで3月の五輪アジア予選(カザフスタン)への出場が決定的。予選出場について話を振られると、喜びの笑顔から一転、すぐさま表情を引き締めた。「オリンピックを考えると、スタートラインに立っただけです。技をもっと研究して、精密さと力強さを伸ばしていきたい。日本の代表として、出られないほかの選手の分も背負ってオリンピックの出場権を獲り、メダルを獲ってきたいと思います」
オリンピックに出場すれば、中大勢としては鶴田友美(グレコローマン100kg以上級)、鎌田誠(フリースタイル90kg級)の2選手を送り込んだ1972年ミュンヘン大会以来、40年ぶりの出来事だ。偉大な先輩たちと肩を並べるべく、天野の新たな闘いが始まる-。