2011.12.28

次世代選手の強化育成…全国6ブロックでNTSブロック研修会を実施中

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 10年目を迎えた次世代の育成を考慮した日本レスリング協会の取組み
  −2011年ナショナルトレーニングシステム(NTS)ブロック研修会−

(文・久木留毅=日本協会強化委員会テクニカルディレクター)


全国6ブロックで実施されているジュニア選手の合宿

 文部科学省は、2012年度予算案に「メダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業」総額約5億円を盛り込んでいる。この予算は、一貫した指導システムを有する競技団体が対象となるであろう。当協会は、10年前(2002年度)から将来オリンピック競技大会等で活躍できる選手養成を目的として一貫した指導体制の整備を試みてきた。

 よって、新しい予算案の対象団体になる可能性が高い競技団体と言えるであろう。

 今年も全日本選手権大会が終了した翌日から、全国を6ブロックに分けて協会が推進するNTSブロック研修会が開催されている(12月24日〜28日)。

 トップアスリートが世界で勝ちメダルを獲得するためには、ハードトレーニングと緻密な戦略が必要である。さらに重要となるのが、ジュニア層の育成であることは言うまでもない。本協会では、JOC加盟団体の中でいち早く2001年に強化委員会が中心となり、高校の指導者の方々の協力を得てモデル事業を展開した。2002年には、全国を6ブロックに分けて現在のNTSの基盤を作り、国が推進する競技者育成プログラムを実施してきた。ブロック研修では、ナショナルチームのコーチとトップクラスの選手を指導者として派遣し技術指導と実践練習を組み合わせた内容を実施している。

 今年も各ブロック約150名〜200名のジュニアレスラーが参加し、多くの技術修得に努めている。写真は、各ブロックにおいて指導をするナショナルチームのコーチ達である。早い段階からナショナルレベルの指導と出会うことは、ジュニアレスラーにとっても良い刺激となる。それぞれのブロックでは、ジュニアレスラーが真剣に聞き入る姿が多く見られた。また、地域の指導者は、ナショナルチームコーチの指導を間近で見られる機会となり、どの会場でも熱心に映像を撮影する者も少なくなかった。

和田貴広コーチの指導

 佐藤満強化委員長は、富山英明前強化委員長時代からジュニア育成の中心的存在でありNTSを最初から立案し推進してきた。そのNTSから発掘・育成された選手らが、現在ナショナルチームの中心メンバーであることからも育成には時間が必要であることが理解できる。2016年リオオリンピックや2020年オリンピックの中心選手を育成していくためにも、更なるNTSの充実が必要である。

 また、毎年2月にはNTS中央研修会を開催している。2009年よりナショナルチームの合宿と同時期に開催し、参加した選手からは好評を得ている。NTS中央研修会では、以下の内容でプログラムが組まれている。

1) レスリングの技術指導(フリースタイル/グレコローマンスタイル共にナショナルコーチより指導)

2) 実践練習(代表選手とのスパーリング)

3) レスラーに必要な栄養の知識(国立スポーツ科学センター栄養スタッフの講義を受講)

4) レスラーに必要なウエイトトレーニングの知識と技術(国立スポーツ科学センタートレーニング体育館スタッフによる講義と実技の指導)

5) トップアスリートに必要なアンチドーピングの知識(日本アンチドーピング機構スタッフの講義を受講)

6) トップジュニア選手の形態・体力測定

 NTS中央研修会は、JOC、国立スポーツ科学センター、日本アンチドーピング機構等の団体の協力得て実施している。宿泊場所は、各競技の代表選手が合宿を行う東京都北区の「味の素ナショナルトレーニングセンター」である。

 長期的な視点に立ったジュニアレスラーの育成戦略は、国際競技力向上のためには不可欠な施策である。この意味からもNTSをさらに充実させて行く必要がある。

小平清貴コーチの指導

豊田雅俊コーチの指導