2011.11.21

【全国社会人オープン選手権最終日・特集】男子グレコローマン60kg級・土田尚人(新潟・新潟県央工高教)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子)

 全国社会人オープン選手権の男子グレコローマン60kg級は、今年4月に新潟・新潟県央工高教員(常勤講師)となった土田尚人(右写真)が優勝。決勝では、1階級下の選手ながら先月のサンキスト・キッズ国際大会(米国)で優勝するなど海外でも実績のある清水早伸(自衛隊)を2-1で振り切った。

 「7月の社会人選手権は準々決勝で負けて、全日本選手権出場の権利を取り損ねてしまったんです。権利を取れてよかった」と、がむしゃらに試合に臨んだのが功を奏した。

 新潟県出身で、新潟県央工高から日体大へ進学。大学1年からグレコローマンに打ち込み、2年生(2008年)の東日本学生秋季新人戦のグレコローマン55㎏級で優勝。全日本選手権出場の機会を得ることができ、翌2009年には60㎏級にアップして全日本学生選手権3位に入った。

 その後、部の活動停止により1年間のブランク。最終学年では、1試合もせずにシーズンが終了し引退。レスリングにけじめをつけて、新たな道に進もうとの決意を固めた。その時、「高校の恩師から、2012年の新潟インターハイの強化スタッフとして、母校での常勤講師を薦められたんです」と、レスリングを続ける道筋に光が差した。

■グレコローマン選手にとっては、やや残念な練習環境

 2010年度まで新潟県央工高で講師としてレスリング部のコーチを務めていた萱森浩輝(2007年世界選手権フリースタイル74kg級代表)が退職し、その後釜を探していたところに、土田に白羽の矢が立った。

決勝の第1ピリオドに豪快ながぶり返しが爆発

 大学でビッグタイトルなしで母校の講師に就く-。これは萱森と同じ経歴。萱森は地元に戻って高校生を指導し、高校生と練習をともにして大学時代以上に力をつけ、世界選手権に出場。2008年北京五輪代表候補にまで名を挙げた。土田は「僕が高校2年のときに萱森先輩が来ました。数年後にはチャンピオンになって、憧れの存在。僕もそのようになれたら」と意気込む。

 ただ、萱森と勝手が違う部分もある。萱森はフリースタイルで、土田はグレコローマンということ。「高校生はほとんどグレコローマンをやらないので、練習相手がいないんです」というのが実情だ。フリースタイル時のスタンドで、強引に差して相手を持ち上げたりなど工夫しながら感覚を磨いているが、ちょっぴり残念な練習環境ではある。

 しかし土田は、今回の優勝によって「1年のブランクから(勘が)少し戻ってきた。(今後も)やれそう」と話し、自信を取り戻したことを口にする。2度目の全日本選手権へ向けて「スタンドでの攻めとグラウンドのリフトで勝ち進みたい」と抱負を語った。