※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
全日本大学選手権84㎏級は、今年の世界ジュニア代表の佐々木健吾(日体大=右写真)が優勝候補筆頭で地元・岐阜県出身、来年の岐阜国体のエースと目される山口剛(早大)を決勝で破って初優勝を遂げた。
今年4月のJOC杯ジュニアオリンピックで優勝し、7月の世界ジュニア選手権(ルーマニア)に参加。だが9月の全日本学生選手権はベスト16と奮わず、今大会へのメンバー選出に黄信号がともったという。だが普段の練習で松本慎吾監督の信用を取り戻し、今大会のメンバーに起用された。
インカレで失敗したこともあり、佐々木の今大会にかける思いは人一倍だった。一方、「前日、3時間くらいしか寝られなかった」と言うほど極度の緊張も引き起こしていた。そんな佐々木を平常心に導いたのは、池松和彦コーチの言葉だった。「練習どおり、スパーリングをしてこい」。派手なレスリングではないが、大好きなウエートトレーニングで鍛えた重厚な体から繰り出す正面タックルを武器に、準決勝までを勝ち抜いた。
■山口の右手を封じて攻撃をカット
決勝は自他ともに“格上”と認める山口との初対戦だった。佐々木が池松コーチと立てた作戦は、ディフェンス重視の試合展開。「ポイントを取られないようにと、相手の右手を取って自由にさせないようにしたら、山口選手が嫌がったのが分かった」と、相手の得意の形に持っていかせなかった。
右手を封じただけで、あとのことは「まったく覚えていない」ほどだったが、山口にいなされても、落とされても、必死についていった。結局、山口に決め手を与えず、作戦どおりに2ピリオドとも2分間を0-0で終わりクリンチ勝負へ。ともに青の佐々木の攻撃権となり、有利を生かして勝負を決めた。「うれしくて仕方がなかった」-。
3年生にして大学王者に輝いた佐々木は「差しと正面タックルで全日本の上位を狙いたい。松本篤史先輩(ALSOK)や、松本真也さん(警視庁)たちに挑戦したいです」と無垢な笑顔を見せていた。
![]() 学生王者を下し、体いっぱいでガッツポーズ |
![]() ガッツポーズのあとは、感極まって号泣 |