2011.11.14

【全日本大学選手権・特集】96kg級・馬場貴大(専大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=樋口郁夫)

悲願の学生王者を手に入れた馬場

 今年の世界ジュニア選手権の男子フリースタイルで最高の5位入賞を果たした馬場貴大(専大)が96kg級を制した。「インカレも決勝で負けたし、初の学生タイトル。ぜひ優勝したかったので、うれしいです」と、声をはずませた。

 1回戦で今年の全日本選抜選手権で負けている同2位の入江泰久(神奈川大)、2回戦で全日本学生選手権の決勝で敗れた大坂昂(早大)が相手という厳しい組み合わせ。最初の難関を、入江を2-0(3-0,2-0)で、大坂も2-0(1-0=2:04,1-0=2:07)で撃破して波に乗り、決勝へ進出した。

 そこで待っていたのは、グレコローマンで今年の世界選手権代表となった有薗拓真(山梨学院大)。グレコローマンの強豪はフリースタイルをやらせても、ある程度やるのはこの世界の常識。その選手をもクリンチがらみで破り、「この階級の強豪すべてと闘っての優勝ですから、自信になります」と、力強く振り返った。

 本来グレコローマンの選手である大坂との全日本学生選手権の決勝は、不本意な結果だった。第1ピリオド、0-0からのクリンチは攻撃権を獲得し、大坂を持ち上げて場外へ放り出した。当然、このピリオドを先取したと思ったが、相手を場外に出すという行為が場外逃避の警告となり、逆にこのピリオドを失った。これでペースを崩したのか、第2ピリオドも取られてしまい、“専門外”の選手に敗れてしまった。

■インカレ決勝の黒星のあと、グレコローマンの練習で強化

 「ルールを知らなかったのがダメなんです」と苦笑いしたが、第1ピリオドを取っていたら、「絶対に優勝できたと思います」と言うだけに、悔しさはつのった。その悔しさを晴らすために取り組んだのが、差しなどグレコローマン的な練習。

 入江は昨年の全日本大学グレコローマン選手権120kg級で2位に入っている選手。大坂はグレコローマンで世界ジュニア選手権に出場しており、“本職”はグレコローマン。有薗もグレコローマンの選手ながら決勝まで勝ち抜いてきており、重量級ではフリースタイルであってもグレコローマンの技術が勝ち抜くために必要な要素であることは間違いない。

グレコローマン日本代表に上半身で勝負を挑んだ

 そこで自分に足りないことを補い、この大会に臨んだ。その成果は、5試合で失ったポイントはクリンチの防御による1点だけという結果にも表れている。スタンドでの守り強さは、グレコローマン特訓の成果であることは言うまでもないだろう。

 長崎・島原高時代の2009年に全国高校選抜選手権やJOC杯カデット選手権で優勝。専大に進んだ直後のJOC杯ジュニア選手権と東日本学生春季新人戦でも優勝し、期待の星だった。2年生秋での大学一は決して遅いとは思えないが、「もう少し早く学生のタイトルを手にできると思ったんですが…。遅かったなあ、という感じです」と言う。12月の全日本選手権で優勝し、“遅咲き”のレッテルを返上する腹積もりのようだ。

 「体力をつけたいです。2分3ピリオドを全力で動ける体力がなければ、全日本では通用しないでしょうから」との課題も把握しており、その克服に全力で挑む。

 専大からは前日の55kg級で半田守(3年)が優勝し、2階級で優勝を遂げた。来年は2人の大学王者を中心に団体戦でもかなりの戦力が組めそう。「同期の近藤(達矢=66kg級、2009年インターハイ王者)もいるし、戦力は厚くなります」と話し、今年予選ブロック2位に終わった東日本学生リーグ戦での目標は「優勝」だ。

 来年は個人、団体とも上を目指した熱い闘いが期待される。