※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子)
全日本大学グレコローマン選手権の96kg級は、今年の世界選手権代表の有薗拓真(山梨学院大)が制した。
試合内容は、本人が「情けない試合をしてしまった」と言うように苦戦が続いた。初戦の村田貴雅(徳山大)戦は第1ピリオド、0-0で1分30秒を終え、グラウンドの防御の終了間際にがぶり返しを受けてしまって2失点。第2ピリオドではバックで1ポイントをとってからローリングを2度決めたが、「気持ちのゆるみから」バックに回られ1ポイント失
学生王者の大坂と闘う有薗
それは2回戦の大坂昂(早大)に対しても変わらず、第2ピリオドではローリングで返されている。準決勝の赤嶺希(青山学院大)戦でも、ローリングの後にバックを取られて1-1となる場面があった。チャレンジで2-1と訂正されたが、ヒヤッとする試合だった。
有薗は「心の弱さが出た」と振り返る。昨年の全日本学生選手権で優勝した時は1ポイントも取られていない。今回相手に与えてしまった6ポイントがいかに多かったかが分かる。
■追われる立場になったことで、心の弱さが出てしまった
7月に世界選手権の日本代表決定プレーオフで勝ち抜き、9月の世界選手権(トルコ)に出場した。全日本チャンピオンの経験はないが、あの過酷なプレーオフを勝ち抜いたことは価値があった。今回の大会は大学生の大会。ここで有薗の気持ちにおおきなひずみが生じた。
「世界選手権代表なのだから学生に負けるわけにはいかない。絶対勝たなければ、ポイントも取られては駄目だ」と、立場が変わったことで戸惑いが出てしまった。周りからの勝って当たり前というプレッシャーも感じ、「心の弱さが出てしまいました」と言う。
決勝は2-0できっちり勝ち、実力を見せた有薗
今回苦戦しながらも下した大坂と赤嶺は、今年のインカレ(注=有薗は世界選手権出場のため不出場)の1位と2位の選手。この2人を倒したことで、「大学グレコのトップであることは示したと高田裕司監督(日本協会専務理事)も認めてくださいました。スタミナの面での力も再確認できました。試合間隔が短く、みんなバテていたけど、自分は平気でした」と自信もつけた。
■強い相手には、強気でいける
有薗が狙うのはもちろんロンドン五輪。そのためには12月の全日本選手権でさらに厳しい闘いに臨まなくてはならない。山口国体では96kgに階級を変更してきた斎川哲克(両毛ヤクルト販売)に1ポイントも取れずに準々決勝で敗退した。
しかし、「斎川さんが強くて自分が弱かっただけです。プレーオフを争った森(保行)さんも山本(雄資)先輩も強い。チャレンジ精神でぶつかっていけるので、今回のようなことにはなりません。ガンガンいって、上がってやるぞ!という気持ちです」と、追う立場の強みを強調する。
11月の全日本大学選手権にも出場する予定で、スタイルは違うが実戦を積んで実力アップをはかる。その後、自衛隊への出げいこを予定している。全日本選手権では、ガンガン前に行くレスリングで有薗らしさを見せる-。