※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
日体大が4階級で優勝し、4年ぶりに全日本大学グレコローマン選手権の大学対抗得点で優勝した。
処分明けの最初の大会となった昨年のこの大会は、優勝なしの3位。全日本大学選手権も優勝なしの4位。今年5月の東日本学生リーグ戦は二部からの再スタートだったので、松本慎吾監督率いる新生・日体大として初の大学日本一ということになる。
松本監督は、8月の全日本学生選手権(インカレ)では5階級制覇にもかかわらず「上2つを落としたから」と喜びを見せなかったが、団体優勝というはっきりした形となると別のようで、第一声は「監督としての初タイトル…。うれしいですね」だった。もちろん「もう1階級は取りたかった」と、は悔しさと反省を口にすることも忘れない。
さらに、「学生の大会ではなく、全日本の上位にいって世界で勝てる選手を育成することを目標にやっている。今回の結果をステップとし、12月の全日本選手権で一人でも多くの選手を上位に入賞させたい」と話し、この結果はあくまでも過程であることを強調した。
松本監督の“常勝・日体大”復活への思いは、表彰式のあと選手からの胴上げのリクエストをきっぱりと拒否したことにも表れている。「胴上げは、団体戦の三冠(東日本学生リーグ戦、今大会、全日本大学選手権)を制覇した時」とのこと。
東日本の大学にとってはリーグ戦での優勝が大きな目標であり、ここで優勝したチームの監督の体が宙に舞うのが普通だが、松本監督は「リーグ戦優勝では受けません」-。果たして来年秋、その体が高々と宙に浮くか。
富塚拓也主将
■個人としてもグレコローマン主将としても満足のいく大会…富塚拓也
チームをけん引してきたのは、66kg級で優勝した富塚拓也主将。自身は8月のインカレで2位に終わって悔しい思いをしていた。それだけに、「内容的には悔しいところもあったけど、優勝できたので、とりあえずよしとしたい」と、内容はともかく結果を評価。もっとも5試合で失ったピリオドはなく、取られたポイントは3点だけだから、全体としては決して悪い内容ではない。
インカレでは1位から3位の4選手が日体大の選手だった。この大会は各大学から1階級1選手の出場なので、部内の競争を勝ち抜くことからして大変だが、その分、大会では自信を持って臨むことができる。「大学代表としての期待やプレッシャーを感じた」と、インカレでは経験しなかった重圧もあったというが、「油断せずにひとつひとつやっていった」と言う。
富塚はインターハイ優勝選手として日体大に進学し、1年生の時のJOC杯ジュニアオリンピックと東日本学生春季新人戦で優勝して順調な滑り出し。2年生のインカレでは3位に入ったが、不祥事によるチームの出場停止によって1年間のブランクへ。実力がいっそうアップする時期に実戦のマットを離れることになってしまった。
不運を乗り越え、最後の学生大会での優勝に、「(出場停止期間中に)応援してくれた人に感謝したい。期待にこたえられたのがうれしい」と話した。周囲の期待こそが、主将としてのリーダーシップにつながったのだろう。「練習の量と質は他大学よりも絶対に上」と言い切れる自信が、チームを日本一に押し上げたに違いない。
自身の学生の大会はこれで終わるが、来年のロンドン五輪と2016年リオデジャネイロ五輪を目指してレスリング活動は続ける予定で、12月の全日本選手権でも目指すは優勝。そのための課題を問われると、「自分の弱点を話すことになるので、それは言いません」-。勢いを取り戻した日体大から、一気に全日本の新星が誕生するかもしれない。