2011.09.13

【世界選手権第1日】男子グレコローマン66kg級・岡本佑士(警視庁)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 【イスタンブール(トルコ)、文=保高幸子、撮影=矢吹建夫】初めての世界選手権-。マットに上がるまでは、どんなものかもわからなかった。上がってみて分かったのは、「世界の頂点に立ちたい」という気持ちだった。3試合を闘った男子グレコローマン66kg級の岡本佑士(警視庁)は、「楽しみたいというより勝ちたいという気持ちが強かったです。悔しいです」と話した。

 初戦はレスリング後進国のアメリカンサモアということもあり、肩の力を抜いて闘うことができた。緊張がほぐれ、いい状態で2回戦を迎えることができた。相手は上がってくると予想していた昨年世界2位のウクライナ選手ではなくポルトガルだったが、「気を抜かないで、チャンスだと思って闘いました」と言う。第1ピリオド終了間際に逆転の巻き投げも決まり、第2ラウンドは攻撃的なスタンドからポイントを重ねた。

パンアメリカン王者相手に攻めあぐんだ岡本

 しかし3回戦、世界の壁にぶつかった。相手は昨年のパンアメリカン選手権を2連覇したペドロ・ムレンス・ヘレーラ(キューバ)。「1ポイントも取れなかった。自分では動けていたと思うので、力不足ということですね」と省みる。「キューバとの差は?」との問いに、「1点も取っていないですから、点を取る力でしょう。体つきも相手が良かったです」と、全面的に強化の必要があることを再確認した。

 五輪出場枠を取るのに足りないものは?との問いには「グラウンドで、返され、返せずに負けたので、オフェンスもディフェンスもやらなければ」と答えた。

 収穫もある。「世界選手権でも全試合でリフト技を使っていきたい」という希望は、これは今のルールではかなり難しいこと。しかし初戦でリフト技、2回戦で巻き投げを決め、大技を成功させる端緒はつかんだ。本人は「正直、上げ切れなかったです。リフトするまでの形や、違う技をみせてからなどのつながる動きを研究しなければ、海外の選手には効かないですね」というが、世界でも通用する可能性は見いだした。

 これからは12月の全日本選手権に向けて準備することになるが、目を向けているのは世界。「今回世界選手権に出て、足りないものがたくさんあったので、それを直していきます。世界で勝つことを目指していけば国内でも勝てるとおもいます」。今回、世界での勝利も敗北も味わった。この経験は必ずや、岡本の糧になる。

 世界の頂点に立つ事を思い描き、五輪出場をかなえたい。日本でも層が厚い66kg級は、全日本選手権も厳しい闘いになる。笹本睦(ALSOK)、藤村義(自衛隊)、清水博之(自衛隊)らもこのまま黙ってはいないだろう。岡本が勢いに乗ってさらなる成長を遂げ、五輪まで繋げられるか。岡本のロンドンへの道は今始まったところだ。