2011.09.02

【全日本学生選手権・特集】男子フリースタイル96kg級・大坂昂(早大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=池田安佑美)

 全日本学生選手権のグレコローマン96㎏級で2年生王者になった大坂昂(早大)が、フリースタイルでも威力を発揮。グレコローマンで培った重たい下半身で相手のタックルを封じ込め、両スタイル優勝の偉業を成し遂げた。

 決勝戦の相手は「フリースタイルで一度も勝ったことがなかった」という馬場貴大(専大)。2年生同士の対決となった。フリースタイルが専門の馬場は、果敢にタックルを狙うが、グレコローマンで勝った大坂は王者の貫録で対抗する。グレコローマンの基本、差しを使って馬場を捕まえて、思うようなタックルをさせなかった。

 第1ピリオドは両者無得点に終わり、ボールピックアップは青の馬場に出た。馬場は笛と同時に大坂を肩まで持ち上げて、そのまま一直線に場外へ投げ落とした。一瞬、外に投げ出されて悔しそうな表情を浮かべた大坂だったが、審判は馬場の技術回避の警告を取り(注:相手が逃げたのではなく、攻撃者の意思で相手を場外に出すことは、警告の対象となり相手に1点が入る=ルール第52条による)、大坂に1点が与えられて第1ピリオドをゲット。

 リードを奪った大坂は、第2ピリオドの序盤に馬場を捕まえて押し倒して計4点を先制。中盤にタックルを受けて1点を失ったが、落ち着いて残り時間をさばいた。この瞬間、2年生で全日本学生選手権両スタイル制覇をやってのけたのだ。

■「昨年王者がいなかったからの優勝」とは言われたくない

 偉業を成し遂げ、「とにかく嬉しい」と喜んだ大坂だが、二言目には「有薗(拓真=山梨学院大)さんがいたら、また違った結果になっていたかもしれない」と、昨年王者への配慮も忘れなかった。

 有薗は昨年王者で連覇を狙ったが、7月のプレーオフに勝って急きょ、世界選手権代表に決定。大事をとって同大会は欠場していた。「有薗さんにオレの分まで頑張ってと言われました」とライバルのエールに大坂は両スタイル優勝という最高の結果で応えた。

 大坂は、フリースタイルに定評がある秋田商高出身選手には珍しいグレコローマンの専門選手。「実は高校1年のときに、股関節のケガの影響で、タックルができなくなって、グラウンドでのローリングの練習ばっかりしていました」。ハンデを乗り越えて、高校時代にグレコローマン王者になり、大学に入ってからも、グレコローマン中心に練習を積んできたことが、2年での優勝につながった。

 だが、「(王者の)有薗が欠場したから勝てた」という声は嫌でも耳に入ってくるだろう。「有薗さんがいなかったから、優勝できたと言われないように、10月の全日本大学グレコローマン選手権では、有薗さんと決着をつけたいです」と学生三冠への抱負を掲げた。