2011.08.31

【全日本学生選手権・特集】男子グレコローマン55kg級・中野智章(日体大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 全日本学生選手権の男子グレコローマン55kg級は、全日本選抜選手権2位の田野倉翔太(日体大)の優勢が予想されたが、最後に勝ち名乗りを上げたのは日体大の同期生(3年)の中野智章。田野倉との決勝(右写真)で、第1ピリオドのグラウンドの防御を守り、第2ピリオドはローリングを決めるというグレコローマンのひとつの“勝利の方程式”で快勝した。

 「ふだんの練習では負けているんです」とのことで、なぜ本番で勝てたかについて聞かれると、しばらく考えたあと、「無我夢中だったから、よく分からないです」と答えた。7月の世界ジュニア選手権(ルーマニア)で5位に入賞し、かなり自信をつけてこの大会を迎えられたそうで、こうした気持ちの盛り上がりが結果に出たのかもしれない。

 「相手は全日本2位だけど、自分は世界5位という気持ち?」との問いに、「そうした意識が芽生えたのは間違いありません」と言う。準決勝までの4試合は、全8ピリオドをテクニカルフォールで取っており、総得失点は54-0。ジュニアとはいえ、世界の上位にいった選手の実力は、学生間では頭ひとつ抜け出ている。

■1年間の出場停止処分を乗り越えての栄光

 中野に限らないが、日体大の選手はチームの1年間の出場停止処分を乗り越えての快挙となる。試合に出られない時期、チーム内で計量をしての試合をやるなどし、実戦感覚が鈍らないようにしてくれたという。「たとえ負けても、それを言い訳にはしない」と決意して臨んだ姿勢が功を奏したようだ。

 この階級は長谷川恒平(福一漁業)が第一人者として君臨し、世界一を視野に入れている階級。全日本選抜2位の選手を破ったのだから、打倒長谷川の一番手に躍り出た格好だが、「いえ、現段階では、まだとても勝つまでは…」と大きな実力差を感じている。「スタンド、グラウンドのすべてにおいてかなわない」と言う。

 それでも、12月の全日本選手権で闘うことになったら、「1点でも取るという気持ちでぶつかります」ときっぱり。そのためには「スタンドでポイントをやらないことが必要」と考えており、デフェンスの強化を中心に実力アップを目指す。