※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
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JOC杯ジュニアオリンピックの男子ジュニア部門で最多優勝をあげた大学は日体大だった。昨年の9月まで1年間の対外試合禁止処分を受け、JOC杯は2年ぶりの参加。対外試合解禁後、秋の全日本大学グレコローマン選手権や全日本大学選手権で優勝者はなく、思うような結果が出なかった。
そこから約半年で日体大ブランドの輝きが戻りつつある。男子のJOC杯(大会MVP)はフリースタイル55kg級の森下史崇が獲得。加えてフリー84kgの佐々木健吾、グレコ55kg中野智章、グレコ74kg中村隆春と計4名が優勝し、世界ジュニア選手権(7月下旬、ルーマニア)の挑戦権を手に入れた。(右写真=左から松本慎吾監督、フリー84kg級・佐々木健吾、グレコ55kg級・中野智章、森下、グレコ74kg級・中村隆春)
しかも、昨年4階級を制した早大を抑えての堂々のトップ。4階級のうち2階級の決勝戦は日体大の同門対決であり、層の厚さを見せつけた。
だが、松本慎吾監督は厳しい表情で、「全員、内容が悪すぎる!」とバッサリ。「フリーは最低4つ、グレコローマンは最低3つ優勝と思っていた」と予想とかけ離れた結果に加えて、「練習の成果がまったくできていなかった」と、次々とダメだしした。MVPの森下への評価も同じ。「オリンピックを狙える選手なのだから、抜群の強さで勝たないといけない。こんなところで手こずっていてはダメ」と、準決勝戦で高校生の高橋侑希(三重・いなべ総合)と接戦を繰り広げたことに、合格点を与えなかった。
大学や国内で勝つこと以上に、世界で勝てることがモットーの“松本・日体大”。監督の視点は、JOC杯でいくつ勝ったことより、世界ジュニア選手権で勝ちに行ける力を出せたかどうかが評価ポイントだったようだ。