※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫)
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昨秋48kg級として初めて世界一に輝きながら、アジア大会でつまずいた坂本日登美(自衛隊)が、国際大会の“再起戦”を4戦全勝で終えた。(右写真=最後の試合でも攻撃レスリングがさえた坂本)
アジア大会のとあと、ハードスケジュールをものともせずに全日本選手権で快勝したものの、国際大会となると別。「アジア大会の反省したことをやってみたい」として臨んだ大会だった。1回戦と2回戦は実力差があったこともあり、得意の速攻がさえての圧勝だった。
3回戦の黎笑媚(中国)は2008年北京五輪の代表の2009年であり、2009年アジア選手権で位妹の真喜子が負けた相手。慎重になってしまい、第1ピリオドはポイントが取れず、クリンチの防御からテークダンを奪われて先制されてしまった。
しかし、「焦ることはなかった」と言う。ピリオドを取られる以前に、「今までなら0-0で終盤にもつれただけで焦りが出て、無理な攻撃を仕掛けた。でも、今回は焦ることなく、『クリンチになって負けても仕方ない。(リードされた展開となっても)これを乗り越えられなければオリンピックは無理だ』と言い聞かせることができた」という。
ピリオドスコア1-1となったあとの第3ピリオドは、「絶対に勝つんだ」という気持ちが全面に出せたそうだ。「自信をなくしていた」という言葉とは裏腹に、心は折れていなかったのだろう。
3位決定戦のリンゼイ・ルシュトン(カナダ)も2009年世界選手権で妹が投げられて負けた相手。警戒する相手だったが、目の前で妹が負けた試合を思い出したら悔しくなり、攻撃レスリングが貫けて2-0(5-0,6-0)の快勝だった。
奇しくも妹の因縁のある相手を連破することになった大会。「反省点はあって、まだ100パーセントとは言えませんが、自信が取り戻せつつあることは確かです。世界選手権につなげられる内容でした」と表情は明るかった。